レーザの明るさ
1980年代もっとも安価なレーザといえば、赤く光るガスレーザ、ヘリウム・ネオン(He-Ne)レーザが代表的なものであった。
現在は半導体レーザが扱いやすく安価に出回っている。
ヘリウム・ネオンレーザは波長632.8nmの赤色発光である。
通常ヘリウム・ネオンレーザは、1~100mWの光出力を持っている。
ここでは10mWの光出力について考える。
このワット表示の光を下記の式を使って何ルーメン(lm)に相当するのかを求めてみたい。
1W(λ)=K(λ)×683 〔lm〕
「比視感度」の記事で紹介した比視感度曲線より、波長630nmの比視感度は555nmの0.29倍であることがわかるので、
0.29×683〔lm/W〕×10×10-3 = 1.97〔lm〕
という値が導きだされ、10mWのヘリウム・ネオンレーザ光の光束は、約2ルーメンに相当することがわかる。
同じ10mWの光出力でもアルゴンレーザの場合は、緑の発光(511nm)であるので赤色ヘリウム・ネオンレーザより2.5倍比視感度が高く、約5lmの光束となる。
ヘリウム・ネオンレーザのビーム径は約1mmであり、レーザ出力10mW、ルーメンで言い換えると約2lmの光がほぼ平行に放射している。
これを照度に換算するには、光束を放射される面積(m2)で割り、
2〔lm〕/(25π×10-8)〔m2〕= 2.5×106〔lx〕
という値が算出され、250万lxとかなり明るい赤色ビームであることがわかる。
これを光学レンズで拡げてφ100mmのビームにすると面積で10,000倍に拡がるの
で、照度は250lxとなる。
これからわかるように10mW程度のレーザではビームイクスパンダで光を拡げてやると室内光程度の明るさになってしまう。
参考までに、真夏の太陽光は100,000lx程度の照度をもち、口径φ50mmの虫メガネでφ1mmに集光させると
100,000〔lx〕(=100,000〔lm/m2〕)×(25×10-3)2×π〔m2〕=200〔lm〕
100,000〔lx〕×(50/1)2 = 250,000,000〔lx〕
という値が算出される。
上式の意味するところは、太陽光は虫メガネの口径φ50mmに200lmの光が当たり、これがφ1mmに集光されると、集光された局部は2億5000万lxの明るさになる。
これは、10mW ヘリウム・ネオンレーザのφ1mmのビームより100倍も強力な光となる。
レーザ光はビームを拡げてしまうと強い光にならない。
レーザは、たくさんの電気エネルギを消費しながらほんのわずかの光学エネルギしか取り出せない(電気エネルギ変換効率が悪い)。
しかしそうしたレーザがもてはやされる理由は、他の光源にはない特徴があるからである。