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エキシマレーザーの原理│医療への応用

エキシマレーザー

エキシマレーザーはガスレーザーの一種である。紫外レーザー光を発振する。

エキシマレーザーは、1970年に初めて発振が確認され、1975年に現在の原型が完成した。

エキシマという言葉は、Excited(励起された)とDimer(二重体)との合成語で、励起された2個の原子または分子が重合してできる分子を意味し、基底状態では通常存在しない。

通常、希ガス(アルゴン、クリプトン、キセノンなどの不活性ガス)とハロゲンガス(フッ素、塩素、臭素など)の混合ガスを真空容器の中で放電や電子ビームなどで強く励起させると、基底状態のハロゲンガスと希ガスが励起状態で結びつき、たとえば、XeCl*などのエキシマ分子(ExcitedDimer=Excimer)を作る(*は励起状態にあることを示す)。

希ガスは、通常、他の元素と結合することはない。

その希ガスを無理矢理結合させて新しい分子を作るのがこのレーザーの特徴である。

希ガスの結合する相手として結合力の強いハロゲンを使う。

この結合状態は、強い放電状態の中で希ガス原子が励起するわずかの時間だけに存在する。

時間にして10ns程度である。

エキシマレーザーの励起は、希ガスとハロゲンガスを用いて強烈な高圧放電によって行うが、この時に同時に放電を促すヘリウムもしくはネオンガスを入れる。

このバッファガスの割合は混合ガスの9割以上を占めている。

励起が終わったエキシマは、基底状態に落ちバラバラの原子に戻る。

エキシマレーザーの発振波長

エキシマレーザーーの発振波長

この発光原理から見てわかるように、エキシマレーザーは、パルスレーザーであり、連続発振は極めて困難である。

パルス発振の周波数は、電源の性能に依存する。

高圧スイッチをいかに効率よくたくさん出すかによってエキシマーレーザーの発振出力が決まる。

現在のところ、一番高い周波数のものは2,500Hzのものがある。

エキシマレーザーの1発あたりのエネルギーは、10μJから数Jのものまであり、大きいエネルギーのものほど発振周波数は低くなる。表を見てもわかるように、エキシマレーザーでは発振波長がλ= 126nm~351nmと紫外域での発振となっている。

エキシマレーザーは、上に述べたように源発振が紫外線のため量子エネルギーが高く、ポリマーのような有機化合物を分解して解離・切断することができる。

このためプラスチックなどの微細加工に使用されている。

エキシマレーザーは、レーザーチューブの中で通常では存在しない化合物が極短時間で生成され消えていく過程の発光であるため、短時間発光のパルスレーザーである。

パルス幅は10~20nsと短い反面、そのピーク出力は数MW(数百万W)にもなる。

したがって、照射された場所から隣へ熱が伝導する時間がなく、熱影響部の幅は数十nmと狭いため熱の影響を受けやすいポリマーなどの加工に秀でている。

強力な紫外線パルスエネルギーを出す特徴が、紫外光により励起蛍光現象を誘導する応用に使われ、LIF(Laser Induced Fluorescence)=レーザー励起蛍光法分野では確立されたシステムとなった。

エキシマレーザーを使って励起された蛍光像は単発発光の画像で暗いため、光増幅装置(イメージインテンシファイア、I.I.)を組み合わせた35mmフィルムカメラ、デジタルカメラ、(cooled)CCDカメラで撮影される。

エキシマレーザーはまた、CPUなどの電子回路を作る際のリソグラフィーの光源としても使われている。

リソグラフを行う場合、光源波長に短いものを使ったほうが光学的分解能が上がり、微細な回路設計での集積度を上げる回路製作には必須の光源になっている。

エキシマレーザー装置は、比較的大きく実験現場での導入にはレイアウトを事前に検討する必要がある。

また、使用するガスも有毒なため取り扱いに注意を要する。