光のいろは

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水銀灯

水銀灯

蛍光灯が低い水銀蒸気のグロー放電であるのに対し、(高圧)水銀灯はアーク放電である。

水銀灯、ナトリウムランプ、メタルハライドランプは、高圧で放電発光を行うためにこれらを総称してHIDランプ(High Intensity Dischargeランプ)と呼んでいる。

HIDランプは、従来は取り回しが厄介で工場や街路灯などにしか見かけなかったが、最近は小型のものが普及し、安定器がランプに組み込まれたものが開発され自動車のヘッドランプにも使われるようになりHIDランプという名前が知られるようになった。

市販の水銀ランプは、ランプ内部に蛍光材を塗布した蛍光水銀ランプ、赤色蛍光材を塗布した白熱色蛍光水銀ランプ、エンベロープが透明な透明水銀ランプ、安定器のいらないチョークレス水銀ランプがあり、40Wから2,000Wまで作られている。

高圧水銀灯の発光スペクトルは、紫外光(404.7nm)と青色(435.8nm)、これに緑(546.1nm)と黄色(577.0~579.1nm)を加えた4本の輝線スペクトルを持っている。

色合い的にはやや緑を持つ青白い光である。

光線が連続スペクトルを持たないため演色性に乏しい反面、電気エネルギから光エネルギに変える効率が50~60lm/W(1Wの電気エネルギから50~60lmの光エネルギが得られる)と高いため、エネルギ効率が優先される街路灯や工場の広域照明設備、スタジアムナイター設備、イカ釣り漁船の漁り火照明に使われている。

また、輝度の高いアーク放電のためアークの一部を点光源として使うシュリーレン点光源や顕微鏡光源(点光源なので微小部を照射しやすいため)としても利用されてきた。

水銀灯は演色性(ものを映し出す色合い、太陽光に近いほど演色性が良いという)に問題があるため、緑と黄色の発光を抑えて紫外線を可視光に変える蛍光材を工夫したり、特殊な分光透過率を持つガラスエンベロープを用いたものが工夫されている。

しかし演色性を改善した水銀灯は発光効率が15%低下する。

高圧水銀灯は公共用広域照明としては有効であるが画像を扱う分野ではあまり用いられ
ない。理由は以下による。

  • 演色性が悪い
  • 点灯時および再始動時に時間がかかる
  • 放電管のためフリッカ発光である 

水銀灯は始動のための専用の安定器が必要である。

水銀の特性はこちらを参照

このランプで使う水銀は蛍光灯のように常温でわずかに浮遊する水銀蒸気を使った低圧放電ではなく、熱(アーク放電)によって水銀を完全に気体にして1~10気圧の蒸気圧にして放電を行うため始動に時間がかかる。

通常で5分から7分程度必要である。

また、点灯したランプが消えて再点灯する場合、多くの安定器は蒸気圧の高くなった水銀灯を瞬時に再点灯させることができず水銀灯が冷えるまで待って再度点灯を行っている。

最近のHIDランプはこうした不具合を解消した安定器が開発されてきている。

水銀ランプの仕様

水銀ランプの仕様