光のいろは

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次世代型無電極放電ランプシステム

次世代型無電極放電ランプシステム

放電ランプのひとつとして新しいタイプの蛍光ランプが登場している。

Philips(フィリップス)社が開発したQLランプシステムと呼ばれるもので、蛍光灯並の効率の良い発光を促し、蛍光灯で使われている熱電子を放出させるためのフィラメントがないため消耗部がなく5倍強(約60,000時間)の寿命が得られる。

QLランプは、熱電子放出のフィラメントを使わず電磁誘導によってランプバルブに封入された金属原子を励起させて紫外光を発生させ、バルブ内面に塗布された蛍光剤で可視光に変えるものである。

この方式は従来の白熱電球にも放電灯にも分類できない新しい光源であり、ランプ寿命を決定する要素であるフィラメントや電極がないことから驚異的な長寿命(白熱電球の60倍、蛍光灯の5倍)を達成している。

この特性は、ランプ交換が困難な場所やメンテナンスコストがかかる分野で威力を発揮している。

このランプが施工された例としては、パリのシャンゼリゼ通りの街路灯がある。

この通りはバリの観光地であり、頻繁なランプ交換は景観をそこねたり交通の妨げになるため、それを避ける意図があったといわれている。

また、ロンドンの時計台ビックベンの時計盤を照射するランプにもこのQLランプが使われている。

日本では1990年に日建設計により、東京都豊島区にあるトヨタオートサロンアムラックス東京が完成し、その外壁に2,000個の無電極ランプが採用された。

その他、高天井の施設、トンネル内、沖合の照明設備、高圧送電線など高所や危険な所などランプ交換の作業を避けたい場所ではQLランプが使われている。

下図を見てもわかるように、ランプには電磁誘導を起こすための棒(パワーカプラー)が内蔵されていて別置きのHFジェネレータと呼ばれる安定器を介してランプが点灯するようになっている。

QL 次世代型無電極放電ランプシステム

QL 次世代型無電極放電ランプシステム

カプラーはランプ内で二次電流を発生させその電流によりランプ内部に充填された金属蒸気(原子)が励起され、それが低準位に戻る際に発生するUV光(紫外光)がランプ内部に塗布された蛍光パウダーに当たって可視光が発生するという仕組みになっている。

QL(無電極放電)ランプの仕様

QL(無電極放電)ランプの仕様

明るさは1Wあたり63~72lmの光束をもち蛍光灯以上の効率があり、メタルハライドランプに迫る効率の良さを持っている。

メタルハライドランプ水銀灯と違って面で発光するので、蛍光灯と同じような柔らかい光が期待できる。

www.optlabo.work

www.optlabo.work

逆にいえば照射到達距離があまり期待できないことにもつながる(つまり、スタジアム用の投光器のような使い方は不向きとなる)。

このランプは蛍光灯などと比べると高価で初期投資に二の足を踏む製品であるが、維持費が安く長期的な観点から見て投資効果が期待できるケースで導入に踏み切る公共施設が多いようである。

この製品を画像用照明装置として使った実績はまだない。