光のいろは

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アーク電灯

アーク電灯

アーク灯は、先にも述べたイギリスのデービー卿が、王立学会でヴォルタの電池2,000個を接続してアークを発生させたのが始まりとされている。

30年間は実験の域を出なかったこの装置も、電極を自動的に調整する機構が発明され、炭素電極も改良されて電気を半永久的に供給できる発電機が導入されて実用化のメドが
たった。

アーク灯の最初の導入は1870年代で、灯台の光源として導入されたという。

1873年、グラムが小型の発電機を発明して、自分の工場にアーク灯を設置して使用するようになって徐々に浸透していった。

ガス灯に遅れること60年である。

このアーク灯は、発電機と灯体がひとつになって移動して使用できるようになっていた。

当時は、発電所などないため自前でアーク灯に供給する発電機を携えたのである。

1882年、パリ博覧会に出展された移動式発電機は馬で牽引できるような馬車の形をしていて(大きさはトラックの荷台程度)、そこに蒸気機関が備えられ、それによって発電機を回す仕組みになっていた。

この発電機にアーク灯をつけた。

石炭を燃やして蒸気を作り、これを機械エネルギの回転力に変え、それをまた発電機によって電気エネルギに変え、最終的にアーク放電から光エネルギを取り出したのである。

アーク電灯は、単純に電気の放電を利用して光を得る電灯である。

点灯させるには電極を接触させ(ショートさせ)、放電が始まると同時に電極を離して、希望するアーク長にする。電極は使用とともに消耗するため絶えず電極間を調整しなければならない。

電極を水平に配置すると一番明るく光る陽極部(クレータ)が陰極棒に隠れてしまうので、陰極を25°傾けて陽極のクレータ部を露出させる方式が一般的であった。

アーク電灯は、アークの揺らぎが多いため安定した光を得るには相当の熟練が必要であった。

また大気放電なので消耗するカーボンが部屋じゅうに飛散するという問題も抱えていた。

映写機のアーク電灯は64Vで60Aの電流を消費したそうである。

消費電力が3,840Wの電球ということになる。

3,840Wの電気がわずかφ6mmの電極棒の7mm程度のギャップの間を放電するため輝度はかなり高いものになる。

アーク灯を映写機の光源として使っていた時代、上映するフィルムはセルロイド(当時は湿度と温度での寸法安定性に優れたものはセルロイドしかなかった)を使っていた。

セルロイドは発火しやすく、しかもフィルムの近くでアーク灯を点灯させるため劇場内は火薬を抱えているようなものだった。

このような映画館に使われたアーク電灯も昭和33年にウシオ電機からキセノンランプが開発され、アーク電灯に換えて映画上映が行われるようになった。

アーク電灯からキセノンランプに置き換わるのには10年の歳月がかかり、劇場用の映写機光源はキセノンランプの時代になっていった。