光のいろは

光を基礎から知るブログ

爆発光源(アルゴンフラッシュ[Argon Flash]、 アルゴンキャンドル[Argon Candle])

爆発光源(アルゴンフラッシュ[Argon Flash]、 アルゴンキャンドル[Argon Candle])

通常の放電光源が高電圧エネルギを用いてキセノンガスを励起させる方式をとっているのに対して、爆発光源は衝撃波エネルギでアルゴン不活性ガスを励起させ、強烈な光源を発生させるものである。

衝撃波の発生には爆薬を用いる。

爆薬が作る衝撃波の発生時間分だけ不活性ガスが励起され、これによって得られる強
烈な光は太陽光照度の10,000倍といわれている。

この光源は、発光する方式が極めて危険であるために我々が一般に使用することはまず不可能である。

しかしながら爆発時の発光を光源として使う発想は特異なもので、この光源は主に爆薬の研究(起爆のメカニズム研究)用に、100万コマ/秒撮影用の高速度カメラ光源として開発された。

文献も米国の研究所から発表されている。

下図に、一般的なアルゴンフラッシュ(Argon flash、Argon Candle)装置の構成を示す。

代表的なアルゴンフラッシュの構成

代表的なアルゴンフラッシュの構成

光源は、外径φ63.5mm、長さ約300mmのアクリルチューブ(B)でできていて、その内側長手方向3/5程度に爆薬が貼り付けられている。

その前面にはアクリル窓(A)を設けてエポキシ接着剤で接着する。

光は、このアクリル窓から放出される。

チューブ内部には、シート状の爆薬シート(E)が丸めて挿入されている。

チューブ(B)の長さによって、フラッシュ発光時間が決まる。

チューブ長の3/5を爆薬シートで被うのが一般的であり、チューブの長さが300mmの場合、900グラムの爆薬を用いることになり約100μsの発光が得られる。

チューブが長くなればそれだけ衝撃波の発生する時間も長くなり発光時間も長くなる。

このチューブの中にアルゴンガスをパージする。

チューブ後端の爆薬シート(C)には、第一爆薬であるテトリルが取り付けられ、これを雷管起爆させる。

テトリルを介して二次爆薬(爆薬シート:Du Pont EL 506A8)が爆発するす。

チューブ内部に貼り付けた爆薬シート(E)は、チューブ後端で発生した衝撃波を最後まで発生させるために(長時間安定した発光をさせるために)チューブ内部に巻かれて
いる。

このアルゴンフラッシュで得られる照射エリアは、照射距離1.2m(4フィート)で、φ380mm(15inch)と報告されている。

もしこれよりも広い範囲を照射したいのであれば、アクリル窓(A)の前に凸レンズを取り付ける。

このランプでは、φ380mmのエリアを、晴天の条件下の10,000倍(109lx)で照らすことができる。

この光源が開発された当時、100万コマ/秒クラスの高速度カメラとして、Beckman & Whitley のmodel 189ロータリーミラー式フィルムカメラが使われていた。

ロータリーミラー式フィルムカメラは、内部光学系がF16と暗く、シャッタ時間が2μsと短く、フィルム感度もASA320(ISO320)相当なので、このアルゴンフラッシュを使ってなんとか撮影できる露光条件となった。

このランプは、起爆装置が働いて最高輝度の発光になるまで発光遅れがあり、チューブ長さで遅れ時間が決まる。

この遅れは、1インチ(25.4mm)当たり4μsとなる。

したがって1フィート長(300mm)のアルゴンフラッシュでは47μsの発光遅れとなる。

米国Stanford Research Instituteのプレスマン(Pressman)の研究によると、アルゴンガスだけをパージするのではなくて、キセノンガスを(アルゴンガス75%に対して)25%添加させると、明るさが添加しない場合に比べ10倍ほど向上するという。

封入ガスもアルゴンガスに代えてキセノン100%とするとさらに2倍の明るさが確保できるそうである。

ただ、キセノンガスは高価であるため頻繁な使用は難しく、キセノンガスより安価なクリプトンの方が現実性が高いとも報告されている。