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中性子光源 (Neutron Radiography Light Source)│X線との違いと応用

 中性子光源(Neutron Radiography Light Source)

X線と性質を異にしながら物体内部を透過し、水の吸収に敏感に反応する光源である。

中性子(Neutron)は、簡単に作り出すことはできず、原子炉の核反応や粒子加速器から発生したものを利用している。

金属内部の水の流れや気泡の発生状況は中性子光源が理想の光源であるため、中性子を用いた撮影法(中性子ラジオグラフィー= Neutron Radiograph = NR)が確立されている。

中性子は直線性が強くそのままでは可視化ができないので、中性子線を可視像に変換する増感板に結像させ、これを(高速度)カメラでとらえるという方法を取っている。

可視像はかなり暗いため高速度カメラの前には1,000倍程度の光増幅ができるイメージインテンシファイアを取り付けて撮影を行う。

中性子ラジオグラフィ(NR)は、X線ラジオグラフィーと同様、不透明体内部の可視化が可能であるが、両者には透過する物体に差異があるため補完的な立場にある。

中性子は水素原子に良く吸収されるため、水、ポリエチレンなど水素原子を含んだ物質に吸収されやすい性質をもっている。

反対にアルミなどはよく透過する。

X線と中性子線の違い

X線は原子量に比例して吸収が強くなっていき、水素では0.1μ/ρ(mass atttenuation coefficient=質量吸収係数)、鉛で2μ/ρ、ウラニウムで3μ/ρ程度となっている。

これに比べ中性子では、原子量の低いものでも水素(25μ/ρ)、ボロン(50μ/ρ)、リチウム(7μ/ρ)などはきわめて強い吸収を示し、逆に原子量が高くてもGd(200μ/ρ)、Cd(15μ/ρ)、Sm(20μ/ρ)、Eu(15μ/ρ)、Dy(3μ/ρ)などは低い値を示す。

原子量が大きくても透過の良いものとしては、鉛(0.03μ/ρ)、BI (0.02μ/ρ)、ウラニウム(0.03μ/ρ)がある。

アルミは中性子の方が良く透過する(中性子0.03μ/ρ、X線0.15μ/ρ)。

中性子光源を用いた研究としては、蒸気爆発の様子を1,000コマ/秒の高速度ビデオと高感度イメージインテンシファイアを組み合わせて、中性子高速撮影を行い、得られた画像の濃度を画像処理装置によって中性子線量に置き換えて、透過率から水、蒸気などの密度計算を行っている例がある。

この実験は、ウッドメタル(鉛、スズ、ビスマス、カドミウムの合金)を恒温漕(600℃)で液体にし、この液体ウッドメタルをステンレスで作った容器に満たした重水中に重力の力で落とし込み、重水素の沸騰の様子を中性子光源を使って高速度撮影を行うものである。

液体ウッドメタルは重水に入ると急速に熱を奪われ固体化して重水の中を落下していく。

高速度カメラは、この挙動を中性子線を用いて500コマ/秒で撮影している。

中性子光源撮影の応用

上に述べた中性子の透過特性を利用した中性子ラジオグラフィーの応用例は次のようなものがあげられる。

  • 宇宙ロケットの火工品、多段ロケットの切り放し切断ボルトの全数検査
  • タービンブレード内の冷却剤経路の目詰まり検査
  • 航空機の翼のまるごと検査
  • 植物の発根機構の解明に関する土壌中の水分量とその空間分布の定量
  • ヒトの歯芽内部の象牙質部の栄養伝達機構の解明
  • ヒトの結石、胆石などの生成機構
  • 気液二相流の解析
  • 粉体流の解明
  • 低温核融合の金属中の水素濃度空間分布の定量