太陽光の光束による地球表面照度
太陽光を照明光源とみなして地球表面を照らす際の照度を求めてみたい。
・光度(I):3.84×1027cd
・地球からの平均距離(D):1.496×1011m
のデータから、また、照度は光度と照射距離の2乗に逆比例することより、以下の結果を得る。
E = I× cosθ/D2
= 171,600 cosθ〔lx〕
赤道上直下(θ=0)で春分・秋分の日の午後0時の晴天(湿度0%)時には、171,000lxという照度に限りなく近くなる。
東京は、北緯35度(θ=35°)であるため、春分・秋分の日の午後0時の晴天(湿度0%)時では、141,000lxに限りなく近くなる。
夏には太陽が北回帰線まで上がってくるため太陽の高さは北緯13度相当になり東京の緯度での照度は、166,000lxまで上がる換算になる。
しかし、大気のチリや、湿度(水蒸気)で光が減衰するため、これを考慮した照度は100,000~150,000lx程度となる。
1983年6月、筆者は米国に出張した際、東部(フィラデルフィアあたり)の空軍試験場で戦闘機の非常脱出装置の人体実験に立ち会うことができた。
高さ50mほどの縦に立てたレール(垂直ではなく80度程度に傾けられていた)に緊急脱出シートを取り付け、トリガによって起爆装置が働き脱出用コックピットシートをレー
ルに沿って放出させるという試験であった。
おそらく、コックピットシートを計画通りのスピード(および加速度)で目的の放出高さまで飛び出させる試験で、シートを速く飛び出させた場合、パイロットが放出時の加速度に耐えられなかったり、放出速度が足りないと速やかに戦闘機から離れられなかったりするため、それらの確認試験であったと思われる。
被験者には心拍数を計る装置をはじめとしたいろいろなセンサが取り付けられていた。
高速度カメラ(1,000コマ/秒のフィルムカメラや200コマ/秒の高速度ビデオカメラ)も数台設置され、シートを押し出すインジェクタのメカニズムとシート放出挙動を撮影しようとしていた。
使用されたフィルムはKodakのエクタクロームというISO250相当のリバーサルフィルムで、カメラレンズの絞りがF5.6であった。
この条件で照度計算をすると現地の太陽光による照度は147,000lxという値になった。
この設定にはいささかビックリした。
というのは日本の屋外ではこれだけの照度が出ないからである。
日本で行われている屋外での自動車の安全実験やスポーツでの高速度撮影では、500コマ/秒のフィルムカメラ(1/2,500秒)を使って、カメラレンズ絞りF4.0~8、使用フィルムISO500で、この条件から計算する屋外照度は80,000lx程度なのである。
アメリカの条件はかなり良いのである。
これは、アメリカの澄んだ乾いた空気が照度をあげていると考えられる。
日本の夏はかなり湿度が高く、日射しがもやったような印象を与える。
これが米国の乾いた大気よりも照度が上がらない要因だと考えられる。